8月30日は、国連が定める「強制失踪の被害者のための国際デー」です。 「笑いましょう」 夫が軍に連れ去られたあと、報道用の家族写真を撮ることになったエウニセは、5人の子どもたちに笑顔を促します。 悲しみに支配された“被害者の家族”として記録されることを、拒むように。 『アイム・スティル・ヒア』が描くのは、1971年、軍事独裁政権下のブラジルで実際に起きたこと。元国会議員ルーベンス・パイヴァは自宅から連行され、そのまま消息を絶ちました。 強制失踪が奪うのは、ひとりの自由や命だけではありません。 残された家族から「どこにいるのか」「生きているのか」を知る権利まで奪い、待つことも、悼むことも終わらせない。ルーベンスの死が公的に認められたのは、連行から25年後でした。 しかし、この映画は暗闇から始まりません。 陽光にきらめく海。家にあふれる音楽。友人たちの笑い声。ウォルター・サレス監督は、自身も幼い頃から親交のあったパイヴァ家の幸福な日常を、愛情を込めて蘇らせます。 だからこそ、政治が玄関を越えた瞬間に生まれる“ひとり分の空白”が、深く胸に残ります。 国家がひとりの存在を消そうとしたとき、家族はどう記憶を守り、どう生き直すのか。 「私はまだここにいる」という題名が、いったい誰の声として響くのか。 ぜひ、最後まで見届けてください。

Aug 30, 2026 · 4:13 AM UTC

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