ワインソムリエ🍷SAKEディプロマ🍶テキーラマエストロ🌵#お酒の豆知識 短編小説 #グラス一杯の物語 についてツイートします🥂感想や質問など気軽にDMください😁
銀座の路地を少し入ったところに、 小さなバーがある。 そこでは毎晩、 誰かの人生が一杯に注がれている。 嬉しかった日も、 うまくいかなかった日も、 誰にも言えなかった想いも。 人は皆、 少しだけ何かを忘れに来る。 そしてまた、 自分に戻るために飲む夜がある。 【第1話:28歳女性】 「こんばんは。一人です。」 空いていたカウンターに腰を下ろすと、 マスターが温かいおしぼりを差し出した。...
(34歳・男性) 『ビールください。』 僕は週に一度、 この近くの英会話教室に通っている。 レッスン後にこのバーで一杯飲むのが、 ささやかな楽しみだ。 通い始めて一年。 今日は先生に 「上達していますね」と褒められた。 日本人はどうしても、 正確な英語を話そうとする。 間違えないことを優先して、 言葉が出てこなくなる。 でも本当に大事なのは、 失敗を恐れずに使うこと。 使わなければ、...
(26歳・女性) 『こんばんは、1人です。』 そう伝えると、 まだ誰も座っていないカウンター席に 腰を下ろした。 『スパークリングワイン下さい。』 このバーは初めて来る。 今日は近くの美容室に寄った帰り、 少しだけ一息つきたくて、 ネットでバーを探した。 キーワードを入力して、 一番最初に出てきたのがこの店だった。 思った以上に雰囲気が良く、 価格も優しい。 女性ひとりでも入りやすい空気がある。...
(40歳・女性) 『こんにちは、ビール下さい。』 (やっぱり、この店のビールは美味しいな。) 以前近くに職場があり、 仕事帰りによくこの店で一杯飲んで帰っていた。 その後事務所が移転し、 約5年間ここへ来ることはなかった。 けれど再び通勤途中にこの店がある部署へ異動になり、 こうしてまた店に来ることができた。 マスターは、 私のことを覚えていてくれた。 それだけで、 この場所に帰ってきて良か...
(50歳・女性) 『こんにちは、元気してる?』 『これ、お土産。』 ——ありがとうございます。 私はこのバーのファンになった一人だ。 初めて来たのは、真夏の暑い夜だった。 マスターが一人で店を切り盛りしていた。 ビールの注文が立て続けに入る中、 私はたまたま空いていたカウンター席に座り、 目の前のビールサーバーを眺めていた。 どんなに忙しくても、 どれだけ同時に注文が入っても、 マスターの注...
(50歳・男性) 『こんばんは。 ソーヴィニョン・ブランをくれ。』 俺はこのバーの常連客の一人で、 今はワインショップで働いている。 新しい分野での再スタート。 出だしは悪くない。 マスターもさっそく店に ワインを買いに来てくれた。 ——3ヶ月前。 『マスター、白ワインくれ。』 俺は近くのブランドショップで働いていた。 仕事帰りにここへ寄り、 他愛のない話をしてから帰るのが習慣だった。...
(21歳・女性) 『こんばんは。』 そうマスターに伝えると、 私は前と同じカウンター席に 腰を下ろした。 このバーに来るのは3回目。 前回来たとき、 私とマスターの田舎が近いことが分かり、 それがきっかけで通うようになった。 それ以来、 マスターの安心感のある対応が、 東京での生活の中で 唯一ほっとできる時間になっている。 東京に出てきて3ヶ月。 何もかもが眩しくて、刺激的で、 まだ慣れない...
(34歳・女性) 『こんばんは、1人です。』 そう伝えるとマスターは静かにうなずき、 誰もいないカウンターへと私を案内した。 店内にはスタイリッシュなマダムと、 大御所音楽プロデューサーのような雰囲気の男性が スタンディングエリアで談笑している。 私は一杯目のハイボールをゆっくりと飲み干し、 おすすめの料理と赤ワインを注文した。 1人なので沢山は頼めない。 それを察したのか、 マスターが言った。...
(27歳・女性) 『こんばんは、 ビール下さい。』 この店に来るのは半年ぶり。 最近は仕事が忙しくて、 なかなか来られなかった。 と言っても、 以前から数ヶ月に一度ふらっと寄る程度の、 ごく普通のお客の一人だ。 マスター『お久しぶりです。 お元気でしたか?』 『えっ? 私のこと、 覚えていてくれたんですか?』 思わず顔がほころぶ。 バーで名前や顔を覚えてもらえるって、 こんなにも嬉しいものな...
(63歳・男性) 『マスター、 スペシャルをくれ。』 “スペシャル”とは、 俺のために作らせた一杯だ。 ロックグラスに バーボンを濃いめのソーダ割り。 仕上げにレモンを軽くひと搾り。 単純だが、これがいい。 黄金比で仕上げたこのカクテルは、 いつの間にか他の常連も真似して 飲むようになった。 この店にはオープン初日に ふらっと入った。 あれからずっと、 俺はここにいる。 最初は一人で飲む客ば...
(68歳・男性) 『マスター、 いつもの黒ビールを。』 僕はこのバーに通う常連客の一人だ。 ここでは性別も年齢も関係ない。 さまざまな仕事をしている客が集まり、 店の外でどんな役職に就いていようと、 ここでは皆が対等に言葉を交わす。 それが暗黙のルールだ。 その空気を理解している常連客たちが、 僕は好きだ。 そして何より、 その環境を自然に作り出している店主の、 絶妙な距離感の営業が心地いい。...
(52歳・女性) ―マスター、 いつものウイスキーソーダ割― 『私はテキーラサンライズ。』 彼の低い声と、 私の少し明るい声が重なる。 私は彼に連れられて、 このバーに来るようになった。 最初はただの付き添い。 でも今では、 この雰囲気とマスターの穏やかな接客が心地よくて、 彼との待ち合わせ場所になっている。 旅行に行くたびに買ってくるお土産をマスターに渡すのも、 いつの間にか習慣になった。...
(50歳・男性) 『マスター、 いつものウイスキーソーダ割。』 ―私はテキーラサンライズ― 俺はこの店に通う客のひとりだ。 以前は一人で来ていたが、 最近はパートナーと来ることが多い。 彼女もこの店を気に入り、 旅行に行くたびにマスターへ土産を渡している。 そんな彼女の律儀なところも、 俺は好きだ。 日本の高度経済成長の余韻が まだ色濃く残っていた時代。 若い頃の俺は、酒、女、車に明け暮れて...
(68歳・女性) 『お久しぶりです、マスター。』 『スパークリングワイン下さい。』 半年ぶりのカウンター。 グラスの中で立ちのぼる細かな泡を眺めながら、 私はそっと口をつけた。 以前は月に2度、 近くで仕事があるたびにこの店に寄っていた。 けれど今は、 母の介護と知人の仕事の手伝いで外出も減り、 気づけば足が遠のいてしまっていた。 それでもマスターは、 何も変わらない笑顔で迎えてくれた。...
(40歳・男性) 『こんばんは。』 俺がそう言うと、 マスターは何も聞かずにビールを出す。 この一杯が、今日の区切りだ。 俺はこのバーの常連だ。 仕事を終え、何軒か顔を出し、 最後にここで一息つく。 それが俺の日常。 家に帰れば両親と家内、 そして子供がいる。 ありがたいことに、 家庭は円満だ。 守るものがあるというのは、 悪くない。 俺はサッカーと共に育った。 物心ついた頃にはボールを蹴っ...
(75歳・男性) 『マスター、黒ビール。』 『あと、マスターも一杯どうぞ。』 ― いつもありがとうございます。いただきます。― ワシがこの店に通うようになって一年になる。 別の店で飲んだ帰り、 ふらりと前を通りかかった。 すると中から陽気な客が手招きしてきた。 それが、この店との出会いだ。 その晩は手招きした女性もちろん、 居合わせた客たちとも愉快な時間を過ごした。 気づけば腹を抱えて笑って...
(30歳・男性) 『マスター、いつもの下さい。』 キンキンに冷えた白ワイン。 それが、僕の一日のルーティンだ。 このバーに通って、 もう8年になる。 常連の顔ぶれも増え、 店の外でもBBQやパーティーをする 仲になった人もいる。 この店に来ると必ず誰かがいる。 そして、昼間の仕事は忘れる。 美味しい食べ物の話。 最近ハマっている趣味の話。 年齢も、性別も、職業も関係ない。 昼間の肩書きは、...
(51歳・男性) 『マスター、 コアントローロックで。』 そう言って俺は、 今日最後の一杯を受け取った。 長年勤めた会社を辞め、 昨年末に同じ業界で独立した。 ――ありがたいことに順風満帆だ、 と言えたら格好もつくんだが。 現実は、 予想以上の時代の変化に食らいつくので 精一杯だ。 独立を見越して貯金はしていた。 今はそれを少しずつ切り崩しながら、 家族を養っている。 正直、あと一年が限界だ...
(45歳・女性) 『こんばんは〜。』 そう言って、 私は空いているテーブルに腰を下ろし タバコに火をつけた。 ひと息吸ったタイミングで、 マスターがいつものワインを 何も言わずに持ってくる。 私は週4日、 派遣の仕事をしている。 出勤日はほぼ毎日、 このバーに立ち寄る。 ここは帰宅途中の乗り換え駅。 家に帰る前、 つい足が向いてしまう場所だ。 家に帰ってもひとり。 気づけばワインを一本空けて...
(33歳・男性) 『こんにちは。』 『マスター、 いつもの水割り下さい。』 俺の仕事はバーテンダーだ。 この店の近くで働いていて、 共通のお客さんがきっかけで マスターと知り合った。 気づけば出勤前に、 ここへ立ち寄るのが習慣になっている。 初めて入るバーでは、 必ずウィスキーの水割りを頼む。 飲み物を固定することで、 その日の自分の味覚が分かる。 そして作り手の力量も。 水割りは簡単そうに...
(25歳・女性) ここだ、ここ。 『一人です。』 空いていたカウンターに座り、 スパークリングワインを注文する。 近くの美容室に通い始めて一年。 前回髪を切った帰りに偶然見つけたのが この店だ。 バーといっても気取りすぎない。 一杯だけ飲んで帰る人も多い。 女性ひとりでも入りやすい、 一階のオープンなお店。 今日は半休。 まだ外は明るい。 夕方の光を浴びながら飲む泡は、 少しだけ特別な気分に...