ハラスメント問題と労務トラブル、問題社員対応、およびクビの専門家です。
オープンレターの首謀者たちが今になって「オープンレターは呉座氏の解雇を求めたものではない。ただ自分たちが一緒に仕事をしないという意思表示だった」などとアクロバティックな釈明を始めてるようですが、かなり無理がありますね。
確かにオープンレター本文中に「呉座氏を解雇せよ」とは書いてません。でもレター中で呉座氏の実名を10回以上も連呼し、その言動を「悪質」と評価したうえで、「傍観者にならない」ことを求め、さらに「中傷や差別を楽しむ者と同じ場では仕事をしない」「距離を取る」といった行動を多くの人が実践することによって社会的責任を問う、と明記してるんですよ。
これだと少々抽象的なので、職場に置き換えてみましょうか。
特定人物を名指しで「問題社員だ!」と認定し、周囲に「傍観するなよ!」「あいつとは距離取ろうぜ!」「一緒に仕事しないっていう手もあるぞ!」などと呼びかけ、多数の同僚が賛同したらどうなるでしょう。
当該人物を辞めさせろ!とは言ってないけど、会議や共同研究から外されたり、仕事を依頼されなくなったり、プロジェクトに呼ばれなくなったりして、職場に居場所がなくなる可能性は容易に想像できますよね。
これこそ厚労省が定義するパワハラ類型のひとつ、典型的な「人間関係からの切り離し」ですよ。
もちろん、オープンレター署名者は呉座氏と同じ職場での雇用関係にあるわけじゃないので、この呼びかけ自体を法的に「職場のパワハラ」と断定することはできません。でも、特定個人を問題人物と公に認定し、多数の人(オープンレター署名は1316筆)が「一緒に仕事をしない!」と表明し、それを社会的責任を問う手段として積極的に広げようとするのは、いわば「集団的な排除・孤立化を制裁手段として使う」発想であり、ハラスメント防止の観点からは非常に危ういアクションといえます。
しかも大学教員の世界なんて、人間関係と評判が仕事に直結する狭い職業社会ですからね。そこで1300人を超える研究者や言論人らが「この人とは一緒に仕事をしない!」と連帯すれば、対象者の就業機会に何らかの影響が及ぶことくらい容易に分かってたでしょうよ。
だから「解職を求めたわけではありません」とか「一緒に仕事をしないと言っただけです」なんてのは詭弁であり、何の言い訳にもなってないんですよ。
「集団で特定個人との関係遮断を促し、その結果として職業上の孤立や排除が生じることを予見できたか」が大事なんですから。これも職場で置き換えると、
会社が社員を辞めさせたいときに、上司が「私は辞めろとは言ってません。ただ仕事を与えず、周囲にも関わらないよう伝えただけです」と説明したら、皆それで納得するか?って話です。そんな理屈まず通りませんよね。
ハラスメントや差別に人一倍敏感で、大上段から道徳を説いてきたあなた方が、集団的な「人間関係からの切り離し」を正当な制裁手段として使った。いまだに消えないその事実こそ、最も重く問われるべきだと思いますよ。
いや、この文章は解雇の意味を含まないです。むしろその解釈にびっくり。
「同じ場では仕事をしない」は、一緒のプロジェクトや企画に配置されそうになったら降りるとか、同じイベントに出ない、の意味で取るものです。
あるいは抗議の辞職をする、も含まれるかもしれない。主に、身を引く話です。