『AI計算科学 ― 表現・推論・探索による計算科学の再編』を、2026年10月28日に東京化学同人から出版します。
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自然科学では、現象を方程式として定式化し、それを数値的に解くことで理解を深めてきました。こうした計算科学は現在、理論・実験と並ぶ重要なアプローチとなっています。
一方で、実際の科学計算には高次元性、マルチスケール性、レアイベント性といった壁があり、そのままでは解くことが難しい問題が数多く存在します。本書では、こうした問題をAIによる表現・推論・探索の再編でどう克服するかを扱っています。
例えば、シュレーディンガー方程式を解けば、電子状態や分子の構造、さらにそこから導かれるさまざまな物性を求めることができます。しかし、計算量が膨大になるため、そのまま解くのが困難な場合も少なくありません。
これに対して、ニューラルネットワークを用いて原子配置などの入力からポテンシャルエネルギーや力を直接予測することで、高速な計算が可能になっています。これは、従来の数値計算をそのまま実行するのではなく、その計算過程をニューラルネットワークによる推論に置き換える「推論の再編」の一例です。
本書ではこれに加えて、構造を持つ高次元の問題をどう表現するかという「表現の再編」、重要なレアイベントをいかに効率よく見つけるかという「探索の再編」など、AIによって計算科学そのものがどのように変わりつつあるのかを幅広く紹介しています。
具体的には以下のようなテーマを扱っています。
表現:波動関数、交換相関汎関数、有限要素法のニューラルネットワークによるモデル化
推論:機械学習原子間ポテンシャル、粗視化、ニューラル作用素によるシミュレーションの高速化
探索:反応経路探索、結晶構造やタンパク質構造の予測、平衡分布からのサンプリング
本書は、月刊誌『現代化学』2025年4月号〜2026年3月号に連載した「AIによる計算化学の発展」をもとに、大幅に加筆・再構成したものです。
また、「表現・推論・探索の再編」という整理は、2026年3月に開催された国際シンポジウム「知の協奏:AI×物理」での発表をもとにしています。
ご興味があれば、ぜひ手に取ってみてください。計算科学以外の分野の方にとっても、参考になるアプローチが多く含まれていると思います。